以上のような、土地に必要な工事についての解説をしていきます。
前提ですが、今回の記事を理解いただいた上で工務店や不動産会社のプロと協力して土地探しをするようにしてください。
理由は以下の通りです。
- 土地と必要な工事の費用は、プロも見積もりしないとわからない。
- あなたとプロの視点によって「良い土地」の判断基準が違う可能性がある。
- 必要な工事について知ることで、土地の見方がわかりプロとの話も円滑に進めやすくなる。
住宅営業で500以上の土地を調べてきたので建物が建てやすい場所の判断はつきますが、あなたが住みやすい場所かどうかの判断は100%正確とは言い切れません。
他のプロの方も同じかと思います。
幾度となく工事費による予算の壁にぶつかってきた私の経験お伝えしますので、ぜひ皆さんの土地探しに役立てていただければ嬉しいです。
具体的な土地の探し方についての記事が2つありますので、本格的に動き始める方は参考にしてください。
- 【前提】工事の種類
- どんな土地に工事費がかかるの?
- 工事費がかかりにくい土地は分譲地
- 工事費がわかったあとの対処法
- 土地決定後に工事が必要とわかったときの対処法
- 【まとめ】原則、プロを味方につけて一緒に土地探しをする。
【前提】工事の種類
工事は1種類ではありません。
工務店のやり方によって違いがあり、わかっていると工事の話がしやすいので前提としてお話しておきます。
本体工事と付帯工事
工務店でよく坪当たり◯◯万円と言っているのは本体工事にかかるお金です。
30坪で坪単価70万円だから2,100万円で建つ・・・という計算をしがちですが、本体価格の他にに付帯工事費が別途かかってきます。
土地の状況や建てる位置によって付帯工事の費用は変わるので、坪単価としては出せません。
わかりやすいのは水道や下水の工事、、、屋外給排水工事です。
本管からの距離が遠いほど、接続に必要な手間・材料は増えますよね。
注意点は附帯工事の定義が厳密に決まっておらず、工務店によって多少の違いがあるかもしれません。
相見積もりをする際は注意して見てみてください。
【第4条関係】附帯工事について
建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事のほか、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事(以下「附帯工事」という。)をも請け負うことが出きるが、この附帯工事とは、主たる建設工事を施工するために必要を生じた他の従たる建設工事又は主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事であって、それ自体が独立の仕様目的に供されるものではないものをいう。
附帯工事の具体的な判断に当たっては、建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等に当たり一連又は一体の工事として施工することが必要又は相当と認められるか否かを総合的に検討する。
国土交通省:建設業法(昭和24年法律第100号 (mlit.go.jp)
この記事の本題で触れていくのは土地の条件によって変わる付帯工事になります。
請負と下請け
要は頼んだ先で直接工事しているか、間接的に管理をして工事をしているかの違いです。
工事が間接の場合、中間マージン分の金額がプラスになる可能性もあります。
本体工事は保証の問題もあるため、工務店にしっかり依頼すべきかと思います。
しかし、予算に余裕がない場合、付帯工事は工務店に相談の上、地元の専門業者とどちらの金額が安いか確認しても良いかもしれません。
私の勤めていた工務店では、土地を平らにするための整地工事は専門業者を紹介し、直接のやり取りをオススメしていました。(やり取りはほぼ手伝ってましたが。笑)
やり取りは注文者(あなた)がする必要はあるので、手間や不安が大きい場合は工務店を信頼してお願いするようにしましょう。
どんな土地に工事費がかかるの?
実際にどんな土地で工事が必要になるかケース別に見ていきたいと思います。
上下水道・都市ガス・電柱などが前面道路にない。
上下水道・都市ガス・電柱などのインフラが土地の近くまで整備されていないと、引き込むために工事費がかかります。
街中では電柱はほぼ問題なく引けますが、上下水道や都市ガスの配管が一本手前の道路で止まっていたり、道路挟んで逆側に入っていたりするケースがよくあります。
舗装を壊して復旧する工事になるため、それなりの工事費がかかるはずです。
また、上下水についてそのエリアに配備されていないというケースもあります。その時は水道の代わりに井戸水、下水の代わりに浄化槽を設置するケースがあります。
一部の地域では浄化槽の設置に補助金があるようですので、必要になった場合は確認してみましょう。
前面道路にインフラが配備されているかの確認先
基本的には工務店や不動産会社に依頼すれば確認してもらえますが、確認先は以下の通りです。
もしご自身で動く必要があるときは、アポイントの上で場所がわかる資料を持っていくと良いかと思います。
地域や内容によっては施工業者が確認するよう役場から案内があったり、配管図などをだすのに費用がかかる場合もあるのであるので、電話確認は忘れずに。
袋小路など道路まで距離がある土地は工事費がかかる。
袋小路という形状や、建築場所が道路から離れている場合は工事費がかかります。
車の通り道になる場所を通して家までつなげるのに工事が必要です。
車の出入りに電柱が邪魔にならないよう注意するなど、建物の計画にも大きく影響します。
土地探しではできる限り避けたい土地形状の1つです。
隣地・前面道路との高低差がある。
高低差があり工事が必要なパターンはいくつかあります。
高低差の度合いや敷地の広さに応じて必要な工事はかわってきます。
外構との絡みもでてくる可能性があるので、お庭などを考えている場合は合わせて提案をお願いするようにしましょう。
工事は基礎業者・造園業者・舗装業者・土木業者などに見積もりの依頼をできるかと思います。
盛土は地盤が安定していない可能性がある。
低い場所に土を盛る場合、地盤が固まりきっていない関係で流れるリスクが比較的大きいです。
可能なら切土またはフラットな土地が好ましいです。
この後、地盤改良という工事もご案内しますが、工事費が少し上がる可能性があります。
土地探しの際に、道路から見て低いかどうかは建てたときの地盤の安定に影響しますので、気にして見てみるとよいかと思います。
縁石切り下げや側溝に道路取付がされていないため車で敷地に入れない。
縁石は道路と歩道の間にある境目の部材のこと、側溝は雨水や排水の経路として使われている部位のことです。
車両が出入りできない場合、縁石の切り下げや取付道路の設置が必要になっていきます。
市町村やその地域によって長さの限度や構造などが変わる可能性があります。
工務店または専門業者に相談の上、申請の有無や寸法の確認をするようにしましょう。
敷地の角に境界標がない。
境界標とよばれる土地の角にある点と点を結んだ線が土地の境界になります。
役割は以下の3つです。
不動産会社が扱う土地の場合には、境界標を地主が入れるケースが多いです。
ただし、地主が境界標の買主負担を条件にしている場合は、それに従う必要があります。
地主がどのような条件になっているかしっかり確認をするようにしましょう。
見積もりは測量業者や土地家屋調査士が依頼先になります。
地盤が弱いため改良工事が必要。
建てる土地の地盤が弱い場合、地盤改良工事が必要になります。
地盤改良の方法は様々です。
砂利を敷き詰めたり、コンクリートの柱を挿すことで、安定した地盤まで力を伝え、建てる家が安定するようにします。
その工事をすることで、地盤保証というものがつきます。
もし地盤が原因で家が傾いたり、沈んだりした場合、その保証を適用することができます。
工事費がわかるタイミングが遅い。もっと早く安心するための対策。
どれぐらいの工事費がかかるか、改良がそもそも必要なのかは地盤調査の結果次第です。
調査にも費用がかかるため、建物の契約後に調査することがほとんどです。
そんな大事な段階で予算オーバーになってしまう、なんてケースもあります。
もっと早く安心したいという場合の確認方法はこちらです。
基礎の形状や、造成の計画次第で工事の有無や金額は変わるかもしれませんが、いずれの方法でも確認することができると思います。
営業担当によっては特に案内がないケースもあるかもしれませんので、もし気になる方はこちらから打診してみてください。
残っている樹木や根っこなどの植物を処分する必要がある。
雑草が生い茂っていたり、樹木や根っこが残っている場合、更地にする必要があります。
基礎の質が悪くならないよう、基礎下に雑草などを残すのもNGです。
業者によっては基礎工事で一緒に処理してしまうこともあるようです。
ですが、植物や樹木が残っている状態で詳細な計画は立てにくいです。
工務店と相談の上、どのタイミングでだれがどこまで処分するか確認するようにしましょう。
残っている古い家や物置などを解体する必要がある。
解体前提で家付きの土地も情報として出てくることがあります。
処分に困っていて安く価格を設定しているケースもあると思うので馬鹿にできません。
ただし、現状渡しで買主で解体が必要な場合は必ず解体の見積もりをとるようにしましょう。
近年はアスベストの関係など処分のための費用が上がってきています。
地主さんに許可をもらって、解体業者に現地を確認してもらいましょう。
解体業者によっては整地や造成工事なども可能なので、必要な場合は合わせてお願いするとスムーズですし、他の業者に依頼するときと比べ諸費用などが安く済むかもしれません。
防火地域・準防火地域内で開口部に防火設備が必要。
建築基準法は建築物に関する決まりごとがあり、地域によって建物に規制がかかるものがあります。
その1つが防火地域・準防火地域と呼ばれるもので、簡単に言うと火災に強い建物にしてくださいね、というものです。
範囲の確認は「市町村名 防火地域」とネットで調べると確認できます。
(防火地域及び準防火地域内の建築物)第六十一条 防火地域又は準防火地域内にある建築物は、(その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ二メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。
建築基準法 | e-Gov法令検索
木造3階未満の建物の場合よくあるのが、外壁の開口部に防火戸(網入りガラス)が必要になるケースです。
防火地域・準防火地域は商業地域や、大きい道路沿いであることが多いので、車の音やお子様の安全など不安を感じる方にはオススメできません。
住宅街というイメージから少し離れる可能性も高いので、よっぽど利便性を求めない限りは避けたほうがいいと思ってます。
電波が微弱なため、共聴設備をいれないとテレビがみれない。
田舎や山の中など、電波が届きにくい場所がまだ存在します。
そういった場所では、街中と同じ仕組みではテレビを見ることができないので、その地域で電波を拾い各家庭おくるための設備を共聴設備といいます。
地域によって違いはあるかもしれませんが、そのための配線工事費が初回にかかるのと、維持費として月額が少しかかります。
これは土地の取引の段階でもわかってないことが多いかもしれません。
もし電波が届きにくそうな印象がある土地は近隣の方へ共聴設備は必要かどうか、金額はいくらかかるか、確認いただくとよいかと思います。
工事費がかかりにくい土地は分譲地
分譲地に工事費がかからない理由は、区分けしているすべての土地を最初から家が建てられる状態にしてから売りに出しているからです。
個人で家が建てられるように業者に整地や造成工事を依頼するときと比べ、まとめて工事できる分費用が抑えられているケースが多いです。
また住宅街で町並みが整っていることも多いため、住環境としてもメリットが大きいです。
掘り出しもののような格安の土地は分譲地で出てくることはありませんが、間違いないお家づくりがしたい場合にはぜひ検討してみてください。
苦渋の選択:古家付き物件
解体でお金がかかりますが古家付きの物件も工事が比較的少ないケースが多いです。
理由はもう既に家が建っているためインフラも土地の高低差も整っている可能性が高いからです。
土地の価格も処分に困っていたり、早く手放したい人も多いはずなのでお求めやすい価格のことが多いです。
このメリットを考えると、「家が建っているから候補地から外れる」という考えは捨てた方がいいですね。
特に人気エリアの土地は空き地が少ないため、古家付きの物件の情報は貴重かと思います。
空き地で見つからないときは、古家付きの土地を意識して探してみましょう。
工事費がわかったあとの対処法
いざ、良さそうな土地が見つかり、見積もりしてみると予算の中に収まらないことも考えられると思います。
そんなときは少しでも各方面へ交渉して予算に近づけるよう動いてみてください。
地主と土地価格の交渉をする。
土地の価格は、あくまで地主の意向次第です。
地主と買主で条件が一致すれば取引が可能です。
交渉時には以下のことを意識してみてください。
不動産業者が入っている場合でも交渉のポイントは同じです。作戦を打ち合わせした上で、不動産業者に交渉をしてもらうようにしましょう。
工務店に工事価格の相談・交渉をする。
良い土地が見つかった場合、見積もりの相談はまず工務店にするかと思います。
工務店に価格を近づけることができないか?難しい場合は工事の方法を変えて予算に収めることができないか確認してみましょう。
どこまでお金をかけてきっちりやるかで工事の内容も変わってきます。
例えば境界線部分の高低差を解決方法は勾配に芝をはるか、擁壁をたてるかの2パターンがあります。
それぞれメリット・デメリットが必ず出てくるので価格と合わせてしっかり提案してもらうようにしてください。
直接専門業者へ工事価格の相談・交渉をする。
工務店からの工事費用よりも抑えたい旨を伝えて専門業者に相談します。
請負と下請けの説明でもあったとおり、マージン分の費用が浮く可能性に期待したい項目です。
実際に依頼するときは専門業者の方では建物の計画を把握していないので、建物の図面や配置図などを用意して説明できるようにしておきましょう。
親切な工務店の場合は同席もお願いできるかもしれません。
ただ直接専門業者に依頼する場合は工務店には一切お金が入りませんので、任せっきりはトラブルの原因になります。
あくまで注文者自身でやり取りをするように気をつけてください。
予算・ライフプランを見直す。
本来はこのタイミングではありませんが、お家づくりをする際は必ずライフプランを組み立てて家計の見直しを行うようにしてください。
理由は固定費を見直すことが、今後の返済の余裕を生み出すことに間違いなく役立つからです。
実際に工務店でも打ち合わせの1つとしてファイナンシャルプランのお話をさせてもらっていました。
感覚で管理していた家計が数字で見えるようになったり、新築購入後のお金のイメージがついてよかったと好評でした。
実際にライフプランやファイナンシャルプランを行う際はマネードクターなど無料でお金の相談にのってくれるような場所もありますので、新築相談前後にぜひ行ってみてください。
土地決定後に工事が必要とわかったときの対処法
土地が決まったあとに工事がわかるケースもあります。
実際にある内容として思い当たるのは以下の内容です。
工務店側がどう頑張って調べてもわからない内容もありますので、そこまでの経緯がとても大事です。
最後の項目の話は実際に私がやってしまった失敗の話です。
必要な工事を確認して、見積もりとしてお客様へ説明できていませんでした。
そのときはお客様へ請求はできませんので、交渉してなんとか社内で処理することができました。
怒られましたが・・・。
もしあなたに直接工事の相談が合った場合、対策として何ができるかを見てみましょう。
契約書の契約不適合責任を確認する。
契約を結ぶような様々な取引には双方が損しないよう契約不適合責任というものがついています。
契約の内容に埋設物についての記載がない場合には、いざというときに地主へ請求することができます。
仲介として不動産会社が入っている場合は代わりに話をしてもらい、直接契約を交わす個人売買の場合は自分で話をします。
ただし、売主が契約の段階で契約不適合責任をつけたくない場合はなしにすることも可能です。
土地情報に「契約不適合責任免責」という言葉が入っている場合は、何かあったときに売主さんが責任をとってくれない土地になります。
まずは、契約不適合責任がついているかどうかを確認し、今後の動きを決めていきましょう。
工務店に工事価格の相談・交渉する。
工務店に工事内容や価格の調整ができないか交渉しましょう。(土地決定前にわかった場合の説明と同じなので、細かい話は割愛します。)
ここで気になるポイントは後出しで金額がわかった責任が工務店にあるかどうかです。
説明があったかどうか、調べようがあったものなのかどうか、ここまでの打ち合わせの経緯などを振り返ってみてください。
もし工務店側に責任があると思った場合は、納得できない旨、話してみてください。
思ったことを伝えて、工務店の言い分も聞いて、話し合いの中で落とし所を見つけましょう。
誠意ある会社・担当者であれば、きっと寄り添って精一杯の対応をしてくれると思います。
対応に誠意が感じられない場合は消費生活センターに相談する。
工務店に相談した場合に、誠意が感じられない、ちゃんと話を聞いてもらえない、ということがあるかもしれません。
一般的に考えて対応がおかしいと思った場合は第3者に相談しましょう。
第三者の相談先の代表例は国民生活センターや消費生活センターです。
相談の内容によっては、当事者間でよく話し合うよう言われて終わるケースもあるようですが、責任の所在が明らかな場合は間に入って話を進めてくれます。
私はそういったところに相談されたことがないので実際のやり取りはわかりませんが、国民生活センターのホームページでは様々な相談事例が公開されています。
近い事例がないか確認してみてもいいかもしれませんね。
実際に連絡する際は各地域ごとに窓口があるようですが、全国統一番号188というのが設定されてみるみたいです。
188に電話をかければ各拠点につなげてくれますので、もしもの場合は活用してみてください。
【まとめ】原則、プロを味方につけて一緒に土地探しをする。
長かったですが、いかがでしょうか?
土地探しで工事が必要になるポイントが見えてきたと思います。
分譲地は工事費も比較的かからず、住環境も優れていることが多いです。
情報に分譲地がある場合は、まず最初に候補として考えてみてください。
きっと土地探しで土地を見る基準になることと思います。
皆さんのお家づくり・土地探しの参考になれば嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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